人間の内面を描く 山本文緒「プラナリア」 | 女を磨く!

人間の内面を描く 山本文緒「プラナリア」

山本文緒の直木賞受賞作ということで
読んでみました!

山本 文緒
プラナリア

題名の「プラナリア」とはヒルのような形をしていて、
体を切っても切っても、ちゃんと元に再生するという
生物のこと。


若くして乳がんをわずらい、
何をするのもかったるい主人公
今度生まれ変わるなら「プラナリア」になりたいという。


「現代の無職をめぐる五つの物語」
「ニート」なんて言葉も定着したけど、
病気を理由に働かない主人公には
全く共感できなかった。(序編「プラナリア」)


しかし「囚われの人のジレンマ」という作品は
大変興味深かった。(ネタバレあり)


「囚人のジレンマ」というのはゲーム理論の用語。
ある強盗事件で逮捕された2人の容疑者を
別々に取調べを行う。
そこである条件を提示する。
「先に自白したら釈放、両方が自白したら2人とも3年の計。
もし相手が自白してしまったら懲役5年。」
2人が硬い絆で結ばれていればいいが、
その保証はない。
つまり、相手の行動によって自分の行動の意味が
逆転してしまうというのが、「囚人のジレンマ」です。

このジレンマが恋愛におけるものだったらどうだろうか。
それを描いたのが「囚われたの人のジレンマ」だ。


大学時代から付き合っている主人公とその彼。
気づくと二人はもう25歳。
卒業して社会人として働く彼女と、
大学院に進み心理学を研究する彼。


彼女は結婚を意識するが、
働いていない彼はもちろん収入はない。
別れる理由もないしが、すぐに結婚できる状況でもない。

このジレンマに悩む彼女に
彼はプロポーズする。


そのやり方がずるい。
彼女が悩んでることもしりながら、
自分の一番いい状況をうまく尊重している彼はほんとにずるい。

女の敵だ。
彼女の性格を知った上で
どんどん追い詰めていく。


この状況って何年も同棲してるカップルに
よくある。
結婚してもいいけどまだしなくてもいい。
確かに人は楽なほうに流れる。
お金がない、成功したら、精神的に余裕がない、
といろいろな理由をつけて。


他にいい人いたら乗り換えたい、
なんて人もはっきりいって少なくない。
「囚われの人」は自分からなかなか起こせない。
「囚われない自由」を恐れているからだろうか?


私は駆け引きを続けなければいけない恋愛は、
好きではない。
「遊び」だとしたら最高に楽しいのかもしれないが、
実際一般ピープルにはそれだけしてるという
余裕はあまりないはずだ。(私には全くない。)


ちなみにもうひとつ印象的な部分があった。
主人公は彼との長すぎる春のことを
「なかなかこないバスを待ち続けていると
途中でタクシーをつかまえるのが癪に障る。」
と表現してる。うまい!